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【S】―エス―01

第10章 化け物

 慰め程度に冷凍庫から取り出したアイスを腹へ納め、続けて手近なカップにコーヒーを注いだ。


 ふと入り口近くの壁に貼りつけてあったカレンダーに視線を留め、心の中で呟く。


(21日。そういや……)


 カレンダーの日付を確認した瞬矢は、つい先日茜と交わしたある約束を思い出す。


 時は遡り、4日前――。


 件の屋敷跡から戻り、茜を家の近くに降ろした時のこと。


「なんで俺が?」


 いきなり切り出されたその言葉の真意が見えず、多少訝りながら訊き返す。


「いいから! 今度の21日、約束ね」


 どうやら瞬矢に拒否権はないらしい。結局押し切られる形となり、承諾したのだった。


 うんうん、と1人納得したかのように背中を向ける茜だったが、突如「あっ!」と素っ頓狂な声をあげぴたりと立ち止まる。


「あと、校内は禁煙だからね!」


 振り返り、眉を聳やかせ覗き込むように念押しする。


「……へいへい」


 なんとも気の抜けた返事であしらう。だがその後茜に「『はい』は1回、返事はちゃんと!」などと説教されたのは言うまでもなく――。


 こうして瞬矢は、半ば強制的に約束をさせられたのである。
 

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