【S】―エス―01
第10章 化け物
茜もそのことに気づきそして理解していたのか、俯いたまま訥々と言葉を返す。
瞬矢は回顧する。
今思えば、なんと言われようともあの場所へは自分1人で行くべきだった。そうすれば茜も【あんなもの】を見ることなどなかったと。
今さら何を言ったところで、詮なきことなのだが……。
改めて日の光でにわかに照らされた茜の姿を横目で捉える。
「その格好、わりと……」
途中で言葉を切ると茜に背を向け、ぽつり「似合ってる」と。それは、傍にいた茜ですら聞こえるか聞こえないかの声。
「――えっ?」
小さな驚嘆の声と共に茜が振り向き見たのを瞬矢は知らない。
「……帰る。約束どおり顔は見せたからな」
くしゃりと黒髪をひと掻きし、自らの羞恥を繕うように背を向けた状態で言い放つ。
だが次いで発せられたのは、全く対局の至って穏やかな言葉。
「それに、まだ調べておきたいことがあるしな」
ふと思い出したかのように足を止め、やや見返りがちに言う。その口元にわずかな笑みを湛えながら。
**
瞬矢は回顧する。
今思えば、なんと言われようともあの場所へは自分1人で行くべきだった。そうすれば茜も【あんなもの】を見ることなどなかったと。
今さら何を言ったところで、詮なきことなのだが……。
改めて日の光でにわかに照らされた茜の姿を横目で捉える。
「その格好、わりと……」
途中で言葉を切ると茜に背を向け、ぽつり「似合ってる」と。それは、傍にいた茜ですら聞こえるか聞こえないかの声。
「――えっ?」
小さな驚嘆の声と共に茜が振り向き見たのを瞬矢は知らない。
「……帰る。約束どおり顔は見せたからな」
くしゃりと黒髪をひと掻きし、自らの羞恥を繕うように背を向けた状態で言い放つ。
だが次いで発せられたのは、全く対局の至って穏やかな言葉。
「それに、まだ調べておきたいことがあるしな」
ふと思い出したかのように足を止め、やや見返りがちに言う。その口元にわずかな笑みを湛えながら。
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