テキストサイズ

【S】―エス―01

第10章 化け物

 
 ――午後2時過ぎのこと。


(……つけられてる?)


 実のところ、ずうっと纏わりつくような視線を感じていた。だが、それを断定するほどの確証はなく。


 はっきりとそう確信したのは、電車を降り改札口を抜けた時。


 相変わらずつき纏う気配に、瞬矢は駅前の歩道でぴたりと歩みを止める。そしてひとつ溜め息をつく。


「しつこいな」


 独りごち、目線を落とした。


 視界に広がるアスファルトの地面を見つめた後、口角をつり上げる。


 駅前の喧騒に小さく地を蹴る音が響き、ひゅう、と風が吹き抜ける音と共に瞬矢は姿を消した。


 するとスーツ姿の40代の男が、瞬矢の行方を追い柱の影から姿を現す。


(――そこか!)


 それを視野に捉え、上体をかがめた俊敏な動作で再度地を蹴りスーツの男を目の前にする。


「!?」


 男は対象者が突如として自分の目前に現れたことに驚き、慌てふためく。


 ふわりと黒髪を靡(なび)かせた瞬矢は眼前にスーツの男を捉え目を細めると、ふっと不敵な笑みを見せ言った。


「あんただろ? さっきから俺のことつけてたのは」
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ