【S】―エス―01
第11章 怪物の涙
一段と声を落とし、辺りを確認しながら答えた。それを聞いた山田は足取りを鈍らせ躊躇いの色を窺わせる。
「その事件の捜査はすでに終了したはずじゃ……」
確かに山田が言ったとおり櫻井 陸の自首、そして自殺という形で事実上捜査は終了した。
(でも上はあれだけの証拠がありながら、なぜ彼を?)
答えの出ない一方通行な思考ばかりが脳内を巡る。
「ええ。けど、変だと思わない?」
香緒里の問いかけに最初こそ冷静だった山田の口調。だが、すぐさまその意図を理解して焦燥にかられる。
「確かにおかしいとは……。だからって、勝手に事件をほじくり返すのはマズいですって!」
ぴたりと立ち止まり山田に鋭い視線を向ける。詰め寄るその視線は両目に映る真実全てを捉えているようでもあった。
「山田、覚えとけ! 隠されていい真実なんて存在しないの!」
静かに、だがはっきりと言い放つそれは、山田に――というよりはむしろ香緒里が自身に言い聞かせているようにも見てとれた。
再び歩き出す香緒里の胸中に過去のある想いがよぎる。
(そうよ。10年前のようなことがあっちゃいけない――)
「その事件の捜査はすでに終了したはずじゃ……」
確かに山田が言ったとおり櫻井 陸の自首、そして自殺という形で事実上捜査は終了した。
(でも上はあれだけの証拠がありながら、なぜ彼を?)
答えの出ない一方通行な思考ばかりが脳内を巡る。
「ええ。けど、変だと思わない?」
香緒里の問いかけに最初こそ冷静だった山田の口調。だが、すぐさまその意図を理解して焦燥にかられる。
「確かにおかしいとは……。だからって、勝手に事件をほじくり返すのはマズいですって!」
ぴたりと立ち止まり山田に鋭い視線を向ける。詰め寄るその視線は両目に映る真実全てを捉えているようでもあった。
「山田、覚えとけ! 隠されていい真実なんて存在しないの!」
静かに、だがはっきりと言い放つそれは、山田に――というよりはむしろ香緒里が自身に言い聞かせているようにも見てとれた。
再び歩き出す香緒里の胸中に過去のある想いがよぎる。
(そうよ。10年前のようなことがあっちゃいけない――)