【S】―エス―01
第11章 怪物の涙
映されたのは、すぐ前にある歩道の映像。
その日はちょうど火事があり、夕闇の通りを映す画面は煙に霞む。その中に黒髪の青年の姿が見受けられた。
「そんな、まさか……!」
驚嘆の声を上げる香緒里が目にしたそれは実に不可解。
というのも、映し出されている映像の時刻がちょうど六野の殺害時刻と重なるからだ。そしてそこには件の人物、斎藤 瞬矢が映っていた。
(ありえない……!)
同一人物が殺害時刻と全く同時刻に、別の場所へ姿を見せるなど。
いったいどういうことなのか。再び彼に接触しようと香緒里が踵を返した時、背後で山田の携帯電話が鳴り、振り返ると同時に足を止める。
慎重に受け答えする山田の様子から、どうやら被害者の身元が分かったようだ。
「誰だったの?」
すると山田は、一度画面に映し出された監視カメラの録画映像を見やると辺りに誰もいないことを確認し、片手で口を隠しながらこそりと答えた。
「実は――」
憚(はばか)りながら話す被害者の氏名に、香緒里は思わず言葉をなくす。
知らされたその人物の名前は『斎藤 瞬矢』。
その日はちょうど火事があり、夕闇の通りを映す画面は煙に霞む。その中に黒髪の青年の姿が見受けられた。
「そんな、まさか……!」
驚嘆の声を上げる香緒里が目にしたそれは実に不可解。
というのも、映し出されている映像の時刻がちょうど六野の殺害時刻と重なるからだ。そしてそこには件の人物、斎藤 瞬矢が映っていた。
(ありえない……!)
同一人物が殺害時刻と全く同時刻に、別の場所へ姿を見せるなど。
いったいどういうことなのか。再び彼に接触しようと香緒里が踵を返した時、背後で山田の携帯電話が鳴り、振り返ると同時に足を止める。
慎重に受け答えする山田の様子から、どうやら被害者の身元が分かったようだ。
「誰だったの?」
すると山田は、一度画面に映し出された監視カメラの録画映像を見やると辺りに誰もいないことを確認し、片手で口を隠しながらこそりと答えた。
「実は――」
憚(はばか)りながら話す被害者の氏名に、香緒里は思わず言葉をなくす。
知らされたその人物の名前は『斎藤 瞬矢』。