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【S】―エス―01

第11章 怪物の涙

 瞬矢はパソコンに一瞥をくれ、再び香緒里を見上げ問う。


「勿論よ」


 香緒里はその問いに間髪入れず、きっぱりと言葉を返す。予想どおりの反応だった。


 さらには「それが父の、そして私の信念だから」とまで続ける。その目には、確固たる決意のようなものが窺えた。


 すかさず瞬矢は切り出す。


「もし、俺があんたの知りたい真実ってやつの手がかりを持っていたとしたら?」


「それ、どういう……!?」


 今まで一貫して表情を崩さず壁に凭れていた彼女が、初めて身を乗り出してきた。


 かかったとばかりに口角をわずかにつり上げ、紺色の光彩を帯びた黒い瞳の奥に獲物を狙うかの如き鋭利な光をちらつかせ言う。


「教えてもいいが、こっちの要求も幾つか聞いて貰いたい」


 彼女は顎に手をあて、しばし考えた後に「分かったわ」と頷く。


 瞬矢は尚も香緒里を見上げる形で、まずは先ほどから気になっていた疑問を投げかける。


「その前に、だ。あんたがさっき言っていた『やっぱり生きてた』ってどういう意味だ? まるで……」
 

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