テキストサイズ

【S】―エス―01

第11章 怪物の涙

 言わんとした言葉を察し香緒里は郊外の山中で遺体が発見されたこと。その身元を調べた結果、遺伝子情報や指紋などが瞬矢とほぼ一致したことを話す。


「なるほど。それでさっきあんな顔してたのか」


 右手で口元を軽く覆い、妙に納得した面持ちで相槌をうつ。


「しかし、俺にこんなこと話していいのか?」


 だが次いで香緒里の口から発せられたのは、瞬矢にとっても意外な言葉だった。


「捜査からは、外されたわ」


 再び腕組みをし瞑目した香緒里は、口の端から小さくふ……と息を漏らすと半ば自嘲気味にそう話す。


「それに、私は彼らのやり方に納得してない」


 今までの自嘲気味な笑みから一転、彼女の表情は炯炯(けいけい)とした遠くを睨めつけるものへと変わり、胸の前で組まれていた両手にはぎゅうと力が籠る。


「でもあなたが生きてたとなると、あれは誰なのかしら……?」


 自分と遺伝子情報がほぼ一致する人物、瞬矢にはひとつの名前しか思いつかなかった。


 そして、瞬矢に代わりその答えを出したのは――。


「あなたの双子の弟……、確か『刹那』って言ってたわね?」
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ