【S】―エス―01
第14章 闇を照らす光
自分でも分かるくらいに全身からすうっと血の気が引く。よたよたと面会者を記した帳簿から離れ、エレベーター脇の壁に身を預ける。
手探りで上のボタンを押し、同時に生じた疑問。
『なぜ、12年前に死んだ人間の名前がここにあるのか?』
東雲夫妻の息子である刹那と弟である刹那。2人は瞬矢の中で不等号であった。
だが、違っていたのかもしれない。
茜の母親が言うとおり、本当はどこかでひっそり隠れ生きていたのかもしれない。
見せかけの墓石だけを建てて。
『東雲 刹那』と『刹那』。今まで自分が弟と認識してきた彼は、果たしてどちらなのだろうか。
エレベーターの到着する音が、病棟のフロアに響いた。
**
午後5時10分。
瞬矢は帰路についていた。
辺りはすっかり夕闇に包まれ、外灯や過ぎ行く車のライト、そして店頭の光が忍び寄る闇を煌々(こうこう)と照らす。
そんな折、瞬矢がたった今から入ろうとするビルの前に誰かがしゃがんでいるのが窺えた。
「ん?」
暗がりの為、ぼんやりとしか窺えない人物に小首を傾げる。
手探りで上のボタンを押し、同時に生じた疑問。
『なぜ、12年前に死んだ人間の名前がここにあるのか?』
東雲夫妻の息子である刹那と弟である刹那。2人は瞬矢の中で不等号であった。
だが、違っていたのかもしれない。
茜の母親が言うとおり、本当はどこかでひっそり隠れ生きていたのかもしれない。
見せかけの墓石だけを建てて。
『東雲 刹那』と『刹那』。今まで自分が弟と認識してきた彼は、果たしてどちらなのだろうか。
エレベーターの到着する音が、病棟のフロアに響いた。
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午後5時10分。
瞬矢は帰路についていた。
辺りはすっかり夕闇に包まれ、外灯や過ぎ行く車のライト、そして店頭の光が忍び寄る闇を煌々(こうこう)と照らす。
そんな折、瞬矢がたった今から入ろうとするビルの前に誰かがしゃがんでいるのが窺えた。
「ん?」
暗がりの為、ぼんやりとしか窺えない人物に小首を傾げる。