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【S】―エス―01

第14章 闇を照らす光

 いつもとなんら変わらない、他愛もないやり取り。だが瞬矢自身、茜と接することで心の錘(おもり)がとれ、ふっと軽くなる気がした。


 理由は分からないが、彼女の言動全てが後ろ向きな思考すらも掻き消してくれるような、まるで心にかかった分厚い靄(もや)が晴れていく……そんな気分にさせてくれるのだ。


 改めて覚えた、日だまりの如き感情。


 暗がりに紛れ、くすりとわずかに頬を緩ませる。


「あー、そうかそうか。勝手にしろ」


 背を向けたままひらひらと右手を扇ぐ。


 茜は小突かれた額を擦(さす)ると、何やら物思いに肩を落とし、ついた溜め息と共にその表情を緩ませる。


 そして肩までの茶色い髪をふわりと躍らせ、小走りで後を追うのだった。


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