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【S】―エス―01

第14章 闇を照らす光

 瑞々(みずみず)しい淡く色づいた唇を真一文字に結び、ぎゅっと瞼を閉じた。


 その際、茜の脳裏をつい先日に聞いた彼女の言葉がよぎる。


 ――それは10月23日、今からちょうど2日前のこと。


     **


 学校の帰り際、西日を受けながら茜は見慣れた景色の続く歩道を歩く。その足取りは、決して軽くはなかった。


 原因は昨日、瞬矢から受けた連絡。


『――。もう、ここには来るな』


 ……一時の間。その後、いつもよりトーンの低い声で吐き出された台詞。


「えっ?」


 理由も告げられず、いきなり切り出された瞬矢の台詞に疑問符ばかりが並び、上手に言葉が出てこない。


「……ちょっ!?」


 訳も分からないまま回線はぷつりと切れ、携帯の向こうから一定のリズムで虚しく響く通話終了の機械音。


 内容はあまりにも一方的で、言葉から理由を知ることは不可能に等しい。


 ――昨日、なぜ彼はあのようなことを言ってきたのだろう。


 答えの出ない堂々巡りな思考に項垂れ溜め息ひとつ終止符を打ち、とぼとぼと歩道を歩き続ける。
 

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