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【S】―エス―01

第14章 闇を照らす光

 視線の先に長く伸びた人影が映り、ずっと垂れていた頭を持ち上げ、人物を視界に映す。


 その人物は新田 香緒里だった。


「こんにちわ」


 眼前に立つスーツ姿の彼女は、そう言って口元に形式的な笑みを湛え、わずかに頭をもたげた。


 彼女は瞬矢を疑っている。きっとまた何か訊きに来たに違いない。


 軽く一瞥した後そう暗に思考を巡らせ、会釈だけを返すと再び歩を進める。


「あなたに話があるの」


(ほら、やっぱり……)


 茜は今、虫の居所が悪かった。瞬矢を疑っており、尚且つ刑事である香緒里の言葉に内心毒づく。


「私は別に話すことなんかないです」


 ふいっと地面に目を逸らし、彼女の横を通り過ぎようとした。だが、


「昨日、彼に会ったわ」


 彼女の放ったその一言に、一定して澱みなかった茜の歩みがぴたりと止まる。


「――……っ」


 「なぜ?」振り返り訊ねようとした。だが喉の奥で空気を凝固したような何かが詰まり、声にならない。


 どうしようもないもどかしさに、歯噛みし俯く。
 

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