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【S】―エス―01

第14章 闇を照らす光

 無機質な蛍光灯の明かりが照らす薄暗い廊下。靴音だけが響く。


 数歩手前を歩く瞬矢の広い背中を見つめる。


 部屋の照明スイッチを押す。蛍光灯は数回点滅した後ぱっと光を放ち、暗い部屋に明かりが灯る。


 部屋の中央に置かれた小さめのガラステーブル。そのテーブルを挟むように対になった革張りのソファ。


 どれもとうに見慣れた物だが、今はやけに懐かしく思えた。


 考えてみれば、ここに来た時点で心の中はすでに決まっていたのかもしれない。


 閉じられたドアにそっと凭れて床へ視線を落とす。


「そういえば……」


 がさがさとテーブルの上に散らばった資料を片づける音。そこに混じり聞こえた瞬矢の声。


 そしてその視線は、訝しげに手元の買い物袋へと向けられていた。


「ああこれ? こないだ誕生日だったから」


 そう言って手元の買い物袋から直径15センチメートル四方のケーキの箱を取り出す。


「……ねぇ」


 本当はこれをきっかけにできれば、そう思い小振りのケーキをテーブルの上に広げながら訊ねた。


「瞬矢の誕生日っていつ?」
 

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