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【S】―エス―01

第14章 闇を照らす光

 もし近いようなら一緒に祝おう、そう思ってのこと。当の瞬矢はソファにふんぞり返りながら答える。


「んー、俺か? 確か2月28日だったかな」


「とっくに過ぎてんじゃん!」


 思わぬ誤算に突っ込みを入れてしまう。それに対し瞬矢は「残念だったな」と、まるで見透かしたような笑み。


「まぁ、本当かどうかは分からないがな」


 とんでもないことをあっけらかんとした表情で話す瞬矢。


 その口振りからは、自身がいつ、どこで産まれたかなど大して気にも留めていないように思えた。


 まるで大切なのは生い立ち云々ではなく、今ここに在り続けることだと言わんばかりに。


「まぁいいや、ついでだし」


 茜は付属でついてきた透明なビニール入りの小さくてカラフルな蝋燭(ろうそく)をひっ掴み、対になっているソファへ腰を下ろす。


「ついでかよ」


 俯き苦笑するも、何かを祝うという事柄に対してはまんざらではなさそうだ。


 手持ちのビニール袋から3本ほど蝋燭を取り出しケーキに立てた。あとは火をつけるだけだと辺りを探す。


「ん、俺するよ」


 言うと瞬矢はズボンのポケットからライターを取り出し、手際よく火をつけていく。
 

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