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【S】―エス―01

第14章 闇を照らす光

 重く垂れ込めた思いを吹っ切るかのように軽くかぶりを振り、無理やりに笑顔を作る。


「じゃあ、1人分追加だね」


 ガラステーブルの上に置かれた透明な袋から、緑色をした追加の蝋燭を1本取り出しケーキにさす。


「ああ、そうだな。あいつの分も」


 それを見て瞬矢も先ほど同様、澱みない所作でテーブルに置かれたライターを取り、蝋燭の先端に火をつけた。


「そうだね」


 蝋燭の先端で揺らめく4つのオレンジ色をした灯火に視線を落とし、茜は静かに肯定した。


 眼前の小さな灯火を見つめる茜の脳裏に、先刻の香緒里の言葉がよぎる。


(……私は、瞬矢にとっての光になれるかな?)


「茜……」


 切々たる思いを巡らせていたところ、不意に瞬矢が呼びかける。


「?」


 いきなりなんだろうと顔を上げて言葉の続きを待つ。やがて瞬矢は、はにかむように視線を逸らしぽつりと言った。


「――誕生日おめでとう」


「――!」
 

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