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【S】―エス―01

第15章 宝探し

 
 ――【本当の真実】。


 それは、表向きな真実の裏に隠された真実のことを示唆しているのだろう。


 当時は、その言葉が意味するものも理解しておらず……。


 家の敷地を取り囲むブロック塀も今は全てが懐かしい。


 毎回見る度に、「あぁ、帰って来たんだ」と実感する苔むした門扉に掲げられた『新田』の表札。


 そういえば、昔よくここで家族揃って手持ち花火をした。今もアスファルトに残る焦げ跡を見て、遠き夏の日の思い出がふっとよぎる。


「ただいま」


 一声あげると同時に、もうだいぶ年期の入った玄関の引き戸をがらがらと開ける。


 眼前に広がるは、毎日のように父親を見送った玄関。その光景は、今も変わらない。


「あら、おかえり。帰るなら前もって一言電話くらい――」


 そう言って廊下の奥から母親が慌ただしく出迎える。


「ごめん。急いでたから」


 そう言い向かってすぐ左手の居間へと足を運ぶ。奥には仏壇があり、父、新田 健の遺影が飾られていた。
 

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