【S】―エス―01
第15章 宝探し
ドアを開けた瞬間視界に広がるこの部屋は、彼女の父親が事故で死んだあの頃のままだ。
部屋にひとつだけ設けられた、日差しを取り込む為の窓に目をやる。窓からは、冬に向けて枝振りを露にした桜の木が遠目に姿を覗かせていた。
「そういえば……」
何かを思い出しぽつりとごちた香緒里は、多少埃っぽい部屋の中を窓際まで歩く。
(宝探しをする時、父は私が必ず見つけられるように、いつも何か手がかりを残してくれていた)
窓から見える桜の木を眺めた後、瞑目した香緒里はしばし思慮に耽る。
**
「お父さんあったよ!」
家の庭に高らかな少女の声が響く。
……あれはいつのことだったろう。
幼い自分は麦わら帽子を被って土まみれ、黒くなった両手で空き箱を父親に向かい掲げる。
「よかったな」
嬉しそうな表情の香緒里に父、健はそう言って縁側で笑顔を見せる。
太陽がじりじりと照りつける、焼けつくような夏の日。庭に生えた桜の木で、蝉がうるさく鳴いていた。
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部屋にひとつだけ設けられた、日差しを取り込む為の窓に目をやる。窓からは、冬に向けて枝振りを露にした桜の木が遠目に姿を覗かせていた。
「そういえば……」
何かを思い出しぽつりとごちた香緒里は、多少埃っぽい部屋の中を窓際まで歩く。
(宝探しをする時、父は私が必ず見つけられるように、いつも何か手がかりを残してくれていた)
窓から見える桜の木を眺めた後、瞑目した香緒里はしばし思慮に耽る。
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「お父さんあったよ!」
家の庭に高らかな少女の声が響く。
……あれはいつのことだったろう。
幼い自分は麦わら帽子を被って土まみれ、黒くなった両手で空き箱を父親に向かい掲げる。
「よかったな」
嬉しそうな表情の香緒里に父、健はそう言って縁側で笑顔を見せる。
太陽がじりじりと照りつける、焼けつくような夏の日。庭に生えた桜の木で、蝉がうるさく鳴いていた。
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