
【S】―エス―01
第16章 雪の降る夜
なかなか自分から姿を見せることができず、廊下の壁に身を潜めていると、
「こっちおいでよ」
実に明朗な声で少女は言った。
緊張と好奇心の間で、少年は木製のドアに手をかけゆっくりと開ける。
**
――201X年 12月8日。
午後8時40分。
闇夜を照らす街灯、車のクラクション、喧騒鳴りやまぬ街の片隅を瞬矢は歩いていた。
黒いコートを羽織り首に深緑色のマフラーを巻いた彼は、取り巻く喧騒をよそに感慨に耽る。
12月に入り、吹き抜ける風もいつの間にやらひんやりとしたものに変わっていた。
今朝方、妙な夢を見た。それはなんの脈絡もなく、けれどもどこか懐かしい夢。
「はぁ……」
暗闇を湛えた空を見上げ吐き出した息は白く、空気は肌を刺すように冷たい。
これは雪が降りそうだ。瞬矢は1人そんなことを考えながらマフラーに口元を埋め、肩を竦める。
ふと眼前。暗闇を煌々と照らすコンビニの明かりに誘われるかの如く、歩みは自然と早足となる。
自動ドアをくぐると軽快な音楽が出迎える。店内を照らす蛍光灯は外の闇夜と対照的で、むしろ眩しいくらいに思えた。
「こっちおいでよ」
実に明朗な声で少女は言った。
緊張と好奇心の間で、少年は木製のドアに手をかけゆっくりと開ける。
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――201X年 12月8日。
午後8時40分。
闇夜を照らす街灯、車のクラクション、喧騒鳴りやまぬ街の片隅を瞬矢は歩いていた。
黒いコートを羽織り首に深緑色のマフラーを巻いた彼は、取り巻く喧騒をよそに感慨に耽る。
12月に入り、吹き抜ける風もいつの間にやらひんやりとしたものに変わっていた。
今朝方、妙な夢を見た。それはなんの脈絡もなく、けれどもどこか懐かしい夢。
「はぁ……」
暗闇を湛えた空を見上げ吐き出した息は白く、空気は肌を刺すように冷たい。
これは雪が降りそうだ。瞬矢は1人そんなことを考えながらマフラーに口元を埋め、肩を竦める。
ふと眼前。暗闇を煌々と照らすコンビニの明かりに誘われるかの如く、歩みは自然と早足となる。
自動ドアをくぐると軽快な音楽が出迎える。店内を照らす蛍光灯は外の闇夜と対照的で、むしろ眩しいくらいに思えた。
