【S】―エス―01
第16章 雪の降る夜
俯きがちに口角をつり上げ返す。
「あんまり、驚かないんだな」
意外――とでも言わんばかりの瞬矢の口調に、茜はひとつ小さく、だが確かに頷き言った。
「夢を見てさ、思い出したんだ。りくって呼んでたその子を本当の兄妹のように思ってた。もう死んじゃってたんだけどね」
(けれど――)
茜の心の中に湧き出たひとつの思い。喉元まで出かけた言葉の続きをぐっと飲み込んだ。
瞬矢は「そっか」と天を仰ぐ。わずかに開いた口から漏れ出た息が、ほんの一時だけ大気を白く染めた。
「もしかしたら、墓石のそいつがその『りく』って奴だったのかもな」
「……うん」
弱々しい肯定と共に小さく息を吐く。
正直なところ、どこまでが夢で何が真実なのか分からない。
ただ『りく』という名前の少年……、その存在が夢幻でないということだけを茜は密やかに実感するのだった。
肌を撫でる空気は相変わらず冷たく何が変わる訳でもなかったが、なぜだか1人よりも温かく思えた。
ちらりと横目で瞬矢の方を見やる。左手には先ほどのアイスが入ったビニール袋。
「そういえばさ……」
「あんまり、驚かないんだな」
意外――とでも言わんばかりの瞬矢の口調に、茜はひとつ小さく、だが確かに頷き言った。
「夢を見てさ、思い出したんだ。りくって呼んでたその子を本当の兄妹のように思ってた。もう死んじゃってたんだけどね」
(けれど――)
茜の心の中に湧き出たひとつの思い。喉元まで出かけた言葉の続きをぐっと飲み込んだ。
瞬矢は「そっか」と天を仰ぐ。わずかに開いた口から漏れ出た息が、ほんの一時だけ大気を白く染めた。
「もしかしたら、墓石のそいつがその『りく』って奴だったのかもな」
「……うん」
弱々しい肯定と共に小さく息を吐く。
正直なところ、どこまでが夢で何が真実なのか分からない。
ただ『りく』という名前の少年……、その存在が夢幻でないということだけを茜は密やかに実感するのだった。
肌を撫でる空気は相変わらず冷たく何が変わる訳でもなかったが、なぜだか1人よりも温かく思えた。
ちらりと横目で瞬矢の方を見やる。左手には先ほどのアイスが入ったビニール袋。
「そういえばさ……」