【S】―エス―01
第16章 雪の降る夜
それはふとした疑問だった。
「ん?」
振り向きざま、瞬矢は妙に間の抜けた声で返す。
斜め後ろから差す光が、彼の鼻筋にかけて陰影を作る。そのやけに蠱惑的な瞬矢の表情に茜は思わず視線を逸らし、言いかけていた言葉を続けた。
「いや、なんでアイスなのかな……って」
遠慮がちな茜の問いかけに瞬矢は自らの左手に握らせたビニール袋へ視線を落とす。
「ああ、これか」
そう言いわずかに左手を持ち上げてみせる。その際、アイスの入ったビニール袋が小さくかさっと鳴った。
ビニール袋から視線を逸らし、俯きがちに「そうだな……」とぽつり呟くと思い出すように考え、そして顔を上げ答える。
「昔、まだあの屋敷の研究施設に実験体としていた時にさ――」
きっと明かりに照らされていなければ、それは周りのもの全てを飲み込むほどの闇を湛えるだろう。
重く暗い夜空を仰ぎ見た瞬矢の口より語られたのは、当事者であった人間以外、恐らく誰も知らないであろう真実。
「ん?」
振り向きざま、瞬矢は妙に間の抜けた声で返す。
斜め後ろから差す光が、彼の鼻筋にかけて陰影を作る。そのやけに蠱惑的な瞬矢の表情に茜は思わず視線を逸らし、言いかけていた言葉を続けた。
「いや、なんでアイスなのかな……って」
遠慮がちな茜の問いかけに瞬矢は自らの左手に握らせたビニール袋へ視線を落とす。
「ああ、これか」
そう言いわずかに左手を持ち上げてみせる。その際、アイスの入ったビニール袋が小さくかさっと鳴った。
ビニール袋から視線を逸らし、俯きがちに「そうだな……」とぽつり呟くと思い出すように考え、そして顔を上げ答える。
「昔、まだあの屋敷の研究施設に実験体としていた時にさ――」
きっと明かりに照らされていなければ、それは周りのもの全てを飲み込むほどの闇を湛えるだろう。
重く暗い夜空を仰ぎ見た瞬矢の口より語られたのは、当事者であった人間以外、恐らく誰も知らないであろう真実。