【S】―エス―01
第16章 雪の降る夜
ゆっくりと振り向いた瞬矢は、紺色を帯びた両目をいっぱいに見開く。深い黒水晶のような瞳と視線がかち合う。
「な、何?」
心臓が大きく一度だけ高鳴る。何か変なことを言っただろうかと、動揺を押し隠し茜は訊ねた。
「いや、別に。ただ……」
瞬矢は合わせていた視線を逸らし、口元にわずかな笑みを湛え寒空を振り仰いだ。
「ずっと昔、誰かに同じようなこと言われた気がして」
ちらりと横目で見やった後、今度はくしゃりと悪戯っぽく笑い、こう続ける。
「もしかしたら、あの屋敷で会ってたりしてな」
まさか、そう思いながらも茜はそのことを否定できずにいた。なぜならば2人共、同じ時期に同じ場所にいたのだから、あながちあり得ない話ではない。
「しかし、おかしな話だよな」
やおら切り出された彼の言葉に、いったい何がだろうと、茜はくりくりとした茶色い目を更に丸くしてきょとんと小首を傾げた。
それを見て瞬矢は、口の端を緩ませふっと笑い「だってそうだろう」と天を仰ぐ。
「俺もお前も、一番思い出したい肝心なところは綺麗さっぱり忘れちまってる」
「な、何?」
心臓が大きく一度だけ高鳴る。何か変なことを言っただろうかと、動揺を押し隠し茜は訊ねた。
「いや、別に。ただ……」
瞬矢は合わせていた視線を逸らし、口元にわずかな笑みを湛え寒空を振り仰いだ。
「ずっと昔、誰かに同じようなこと言われた気がして」
ちらりと横目で見やった後、今度はくしゃりと悪戯っぽく笑い、こう続ける。
「もしかしたら、あの屋敷で会ってたりしてな」
まさか、そう思いながらも茜はそのことを否定できずにいた。なぜならば2人共、同じ時期に同じ場所にいたのだから、あながちあり得ない話ではない。
「しかし、おかしな話だよな」
やおら切り出された彼の言葉に、いったい何がだろうと、茜はくりくりとした茶色い目を更に丸くしてきょとんと小首を傾げた。
それを見て瞬矢は、口の端を緩ませふっと笑い「だってそうだろう」と天を仰ぐ。
「俺もお前も、一番思い出したい肝心なところは綺麗さっぱり忘れちまってる」