【S】―エス―01
第3章 亡霊からの手紙
そう、確証はない。
だが、例えばだ。もしも仮に弟の刹那が生きているとして、彼がこの手紙の差出人『S』であると仮定すれば、全てにおいて辻褄が合う。
(しかし、なんなんだこの纏わりつくような薄ら寒い不安感は。何か大事なことを忘れているような……)
ずっと頭の片隅にこびりついて離れない、薄らと靄のかかった何か。瞬矢は、その一番曖昧な部分がずしり首をもたげてくるのを感じていた。
しばしの間、部屋を沈黙が支配する。聞こえるのは、パソコンの電子音と時計の秒針を刻む音ばかり。
そんな現状を打開したのは、茜の発した一言だった。
「そんなに気になるんだったら、行ってみればいいじゃない」
「――!?」
いきなり出された提案に瞬矢は、はたと顔を上げ茜を見下ろす。
雲間から太陽が顔を出し、光が差し込む。ゆっくりと部屋を明るく照らす日差しは、茜の両目に快活な光を宿した。
確かに今ここでごちゃごちゃ考えたところで、それらは机上の空論でしかない。
「全く……、お前にはかなわないな」