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【S】―エス―01

第3章 亡霊からの手紙

 右手でくしゃくしゃと髪を掻き、参ったというふうに苦笑いを見せて言うと重い腰を上げる。


「そうこなくっちゃ!」


 勢いよく立ち上がりそう言った茜は、にこりと満面の笑みを浮かべ小動物のようにくるりと一回転してみせた。


 その度、内巻きに切り揃えられた髪が空中で軽快に揺れる。


 彼女の言動に半ば翻弄されながらも、自分の中の日常という世界が少しずつ変わり始めていることに、瞬矢はまだ気づかない。




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