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【S】―エス―01

第17章 困惑

 いや、そんなはずがない。あれはただの夢なのだから。


 そう、暗に浮かんだ考えを否定するかの如くかぶりを振る。


 おもむろにコーヒーの入ったカップを置き、頭を冷やそうと洗面所へ向かった。


 両手で掬った冷水に2、3度顔を潜らせ洗面台の縁に両手を置く。流れる水は、いつの間にか温水に変わっていた。


 蛇口を捻り水を止めたその瞬間、軽い頭痛が襲う。


 鏡は蒸気のせいで曇っていた。鏡に映った自身の顔に、にいっ……と笑う刹那を見る。


「っ!?」


 声なき驚嘆、半歩後方へ後ずさる。


 そして何よりも、いつもなら黒いはずの両目。その虹彩部分が、青く仄かに光を帯びていたのだ。


 先ほどの夢が原因なのだろうか。とりとめのない思考の中、右手の指先で目元にそっと触れてみる。


 青く光を帯びた双眸以外、特にこれといった異常はない。強いて言うならば、わずかに心拍が上昇していることくらいだろうか。


『――君と僕は同じなんだよ』


「――違うっ!」
 

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