
【S】―エス―01
第17章 困惑
エレベーターを待つのももどかしく、つい先ほど下りたばかりの階段を使い、栗色の髪を躍らせながら一気に駆け上がる。
散乱するガラス片の中、右半身を茜が立つドアに向け俯き部屋の中央に佇んでいた。ひしゃげたブラインドだけが乾いた風にカラリと鳴った。
「どうして……」
ジャリ、靴裏で散らばったガラス片が砕ける音。
俯いたままゆっくりと振り向いたその瞳には先ほどの光はなく、夕暮れを反映させた黒水晶のようであった。
彼は歩を進め、床に落ちていた黒いコートを右手で拾い上げながら言う。空虚な独り言でも呟くかのように。
「……思い出したんだ」
コートについたガラス片を軽く払う。その間、一切目を合わそうとはせず、茜の後方にあるドアへ向かう瞬矢は淡々と言葉を続ける。
「――【人殺し】なんだよ、俺は……俺たちは。……分かったらさっさと帰れ」
散乱したガラスの破片を踏みしめながら、ゆっくりとすれ違いざま。
「えっ……!?」
(【人殺し】? それって、どういう――)
茜はその言葉の意とすることを飲み込めず、見開かれた茶色い両目はガラス片が散乱した黄昏を映す部屋に游ぐ。
散乱するガラス片の中、右半身を茜が立つドアに向け俯き部屋の中央に佇んでいた。ひしゃげたブラインドだけが乾いた風にカラリと鳴った。
「どうして……」
ジャリ、靴裏で散らばったガラス片が砕ける音。
俯いたままゆっくりと振り向いたその瞳には先ほどの光はなく、夕暮れを反映させた黒水晶のようであった。
彼は歩を進め、床に落ちていた黒いコートを右手で拾い上げながら言う。空虚な独り言でも呟くかのように。
「……思い出したんだ」
コートについたガラス片を軽く払う。その間、一切目を合わそうとはせず、茜の後方にあるドアへ向かう瞬矢は淡々と言葉を続ける。
「――【人殺し】なんだよ、俺は……俺たちは。……分かったらさっさと帰れ」
散乱したガラスの破片を踏みしめながら、ゆっくりとすれ違いざま。
「えっ……!?」
(【人殺し】? それって、どういう――)
茜はその言葉の意とすることを飲み込めず、見開かれた茶色い両目はガラス片が散乱した黄昏を映す部屋に游ぐ。
