
【S】―エス―01
第17章 困惑
暗闇の中、季節外れの蝶が輪粉を散らしてひらひら舞う。あまりにもはっきりと見えたそれは、夢幻か。
確かに言えるのは、反響しながらも聞こえた『裏だ』という声。
「……あっちか」
地面に突き刺したシャベルを握り直す。
前方を懐中電灯で照らしながら、古びたフェンスが森と敷地の境界を仕切る形で張り巡らされている屋敷の裏手へと向かった。
フェンスを乗り越え歩き、天を覆い尽くさんばかりに脈々と根を張る大木の前で歩みを止める。その木の根元に視線を落とす。
冷たい夜風が艶やかな黒髪をそよがせ、羽織っていたコートの裾を靡かせた。
持っていた懐中電灯を地面に置き、おもむろにシャベルで足元の赤黒い土を抉った。時折、足元を懐中電灯で照らしながら。
地表から1メートルほど掘り進めているとカツン、とシャベルが何か硬いものに当たる。
「……!」
岩か何かに当たったのだろうか。瞬矢はシャベルを放るとしゃがみ込み、表面に被っている柔らかな土を両手で掻き分けた。
両の指先がひやり、そしてざらりとした何かに触れる。
確かに言えるのは、反響しながらも聞こえた『裏だ』という声。
「……あっちか」
地面に突き刺したシャベルを握り直す。
前方を懐中電灯で照らしながら、古びたフェンスが森と敷地の境界を仕切る形で張り巡らされている屋敷の裏手へと向かった。
フェンスを乗り越え歩き、天を覆い尽くさんばかりに脈々と根を張る大木の前で歩みを止める。その木の根元に視線を落とす。
冷たい夜風が艶やかな黒髪をそよがせ、羽織っていたコートの裾を靡かせた。
持っていた懐中電灯を地面に置き、おもむろにシャベルで足元の赤黒い土を抉った。時折、足元を懐中電灯で照らしながら。
地表から1メートルほど掘り進めているとカツン、とシャベルが何か硬いものに当たる。
「……!」
岩か何かに当たったのだろうか。瞬矢はシャベルを放るとしゃがみ込み、表面に被っている柔らかな土を両手で掻き分けた。
両の指先がひやり、そしてざらりとした何かに触れる。
