テキストサイズ

【S】―エス―01

第18章 影の命

 淡々と歩を進める東雲 暁が向かったのは、あのオートロック形式の重く冷たいドアがある地下へ続く入り口だった。


 コンクリート製のドアは、あの時のままぽっかりと口を開け出迎える。


 手にした懐中電灯が、足元の地下へと続く階段を部分的に照らす。


 ――『おかえり』。


 地下へ延々と続く深い闇の向こうがそう言っているように思えた。


 ところが東雲 暁はなんの躊躇もなく地下へ続く階段に歩を進め、次いで瞬矢も真実を孕んだ暗き深淵へと足を踏み入れる。


 地下は相変わらず埃っぽく、黴と薬品の織り混ざった匂いが鼻腔を刺激する。床に散らばったガラス片や血痕もそのままだ。


 初めて屋敷跡に訪れ見たのは、地下にあるこの部屋まで。


 彼は周りの物に一瞥もくれず、ただ部屋の奥へ奥へと歩いてゆく。やがて立ち止まった先、それは以前開けることができなかった部屋の一番奥にあるドア。


 確か開けるには認証コードが必要だ。


 だが東雲 暁は、ドアの様の壁に設けられた電卓のような入力パネルに、慣れた手つきで素早くそれを打ち込んでゆく。
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ