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【S】―エス―01

第18章 影の命

 だが同時に、今まで瞬矢の胸中に影を潜めていた疑問が再度浮き彫りとなる。


 ――なぜ弟は『東雲 刹那』の名前を用いたりしたのか。


「あの子のことは訊かれると思ってたよ」


 東雲 暁は、そう言いおもむろにスーツのポケットから財布に入った写真を取り出す。


 そこには、無邪気に笑う年の頃およそ10歳くらいの黒髪の少年がいた。


 それは、瞬矢が以前焼け跡で見つけたあの写真と同じものだった。


 彼は手元の写真に視線を落とし、ふっと懐かしむように言う。


「君も昔はこんなふうに無邪気に笑ってたよ」


 12年前に死んだ息子、そして『刹那』という名前。そこで瞬矢の脳裏に、あるひとつの可能性が浮上する。


 それは、到底認めたくない……けれども、どうにも頭の片隅に纏わりついて離れない推測。


 だが彼は、否定したかったその真実を容赦なく突きつける。


「君は……いや、君たちは死んだ私の息子『東雲 刹那』の細胞から造り出されたクローン体なんだよ」



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