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【S】―エス―01

第18章 影の命

 憤りと自己嫌悪。再び込み上げる感情に歯噛みし、両手を強く握り拳を作った。自分ではなく、他者を想って。


「君は茜に会えて嬉しくなかったかい?」


 相変わらず物腰柔らかな口調で話す彼の一言に、瞬矢ははっと目を見開く。


「それはっ……!」


 だが、即座に否定できず押し黙ってしまう。動揺で伏せた瞳は答えを探し宙を游ぐ。


 記憶にある彼女と時を経て再び出会った彼女。いいことばかりではなかったが、確かにその全てが瞬矢にとって光だった。


「どうやら、君を斎藤家に引き渡したのは正解だったようだね」


 ふっと口元に笑みを浮かべ、東雲 暁は表情を確かめるかの如く見上げる。


 その言葉が、笑顔が何を意味するのかなど今の瞬矢には到底理解し得なかった。


 だが先ほどの話から、どうも彼の本意でなかったように思える。


 『――の依頼で』ふとよぎったその言葉を思い出し、思い切って訊ねてみた。


「俺たちを造り出すよう依頼したのは、誰だ?」


「それは……」


 眼前の彼が視線を逸らし言葉を濁しながらも答えようとした時、瞬矢の携帯電話が鳴る。


「!」
 

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