
【S】―エス―01
第3章 亡霊からの手紙
弟である刹那のあてどない悲しみが、瞬矢には立っているだけで感じられた。まるで、事件当夜、自分がその場所に居合わせていたかのように。
数歩距離をおき、その光景を傍観していて茜は思った。きっと今の瞬矢には、自分が決して見ることの出来ない景色を見ているのだと。
「これが、記憶の共有?」
だが、そんな茜の考えを、次いで放たれた言葉がいとも容易く打ち砕いたのだった。
「ほんの手始め、か……」
くくっと喉を鳴らし肩を震わせ嘲笑する。
「しゅん……や?」
舞い散る桜の花びらの中、今までに見たこともないその表情に茜はぞっとし、思わず息を呑む。
そして後悔した。自分が持ちかけた、あまりにも安易で愚かな後先考えない提案に。
「――っ」
その光景を見つめる茜は、足がすくみ上手く声を出せないでいた。
何故ならば、目の前で口を歪ませ笑うのは確かに斎藤 瞬矢その人なのに、まるで全くの別人を見ているようであったからだ。
共有――否、それはもはや域を超えた何か。
「瞬矢!」
数歩距離をおき、その光景を傍観していて茜は思った。きっと今の瞬矢には、自分が決して見ることの出来ない景色を見ているのだと。
「これが、記憶の共有?」
だが、そんな茜の考えを、次いで放たれた言葉がいとも容易く打ち砕いたのだった。
「ほんの手始め、か……」
くくっと喉を鳴らし肩を震わせ嘲笑する。
「しゅん……や?」
舞い散る桜の花びらの中、今までに見たこともないその表情に茜はぞっとし、思わず息を呑む。
そして後悔した。自分が持ちかけた、あまりにも安易で愚かな後先考えない提案に。
「――っ」
その光景を見つめる茜は、足がすくみ上手く声を出せないでいた。
何故ならば、目の前で口を歪ませ笑うのは確かに斎藤 瞬矢その人なのに、まるで全くの別人を見ているようであったからだ。
共有――否、それはもはや域を超えた何か。
「瞬矢!」
