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【S】―エス―01

第19章 真相、そして――

 午後9時40分。


 住宅街から離れた人気のない路地。斎藤 瞬矢に【S】の情報を渡す為、香緒里は目的の場所へ向かい歩いていた。


 空には、ゆるりと笑んだ月が妖しく輝いていた。


 背後からひたひたとつき纏う気配。その気配に香緒里は覚えがあった。以前、感じた視線と同じどこか寒気のするそれ……。


 振り返ると、ライトグレーのフードを目深に被ったすらりとした人物が行く手を塞ぐ。


 全身から放たれる危険信号。拳を繰り返すもかわされ、反対の手で人物の襟を掴む。しかし手首を掴まれ咄嗟の機転で逆手にとり、背負い投げる。


 人物は重心をなくすが、猫のように宙で身を捩り間合いを取ると、タンッと両足で地面に着地した。


 姿勢を屈め、しゃがみ込んだ人物はゆらりと立ち上がる。唇は弧を描き笑っていた。


 電子音を上げて不規則に点滅する外灯。


(狙いは、父の情報か……)


 香緒里が人物をきっと見据え、そう思った時だった。人物は視界から消え、笑みを浮かべたまま一瞬にして間合いを詰める。


「なっ……!?」
 

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