【S】―エス―01
第19章 真相、そして――
トラック一台は楽々入れそうな広い入り口に、月明かりの逆光を浴びて暗く象(かたど)る人影。
わずかに窺えた茶色い瞳が見下ろす。
ライトグレーのフードの代わりに、それと同色のコートを羽織っていた。中には白っぽいハイネックシャツ。
「刹那!」
口元に右手をあてくすくすと笑う。彼が手にしていたのは、実験に関することが記された黒い手帳とメモリーカード。
「全て知ってるのよ刹那……いえ、S‐07。あなたが『東雲 刹那』のクローンだということも」
彼の、口の端から溢れる笑みがぴたりと止んだ。
「だったらどうなの?」
貼り付けた笑顔とは対照的に、実に平淡な口調をもってして歩み寄り、香緒里の眼前で膝を屈め話す。
「僕を捕まえる? そして全て明らかにする? でも出来るかなぁ、今の刑事さんに」
膝の上に片手で頬づえをつき、観賞物を眺めるかのような表情。香緒里は自身の状況を理解した上で、ぐっと歯噛みし刹那をねめつける。
「あなたがこんなことをする目的は何!?」
すると刹那は「目的? 目的かぁ……」と少年のような表情でしばし視線を宙へ游がせ目的、目的……と呟いた後、作られた三日月の笑みを浮かべ、やがて答えた。
わずかに窺えた茶色い瞳が見下ろす。
ライトグレーのフードの代わりに、それと同色のコートを羽織っていた。中には白っぽいハイネックシャツ。
「刹那!」
口元に右手をあてくすくすと笑う。彼が手にしていたのは、実験に関することが記された黒い手帳とメモリーカード。
「全て知ってるのよ刹那……いえ、S‐07。あなたが『東雲 刹那』のクローンだということも」
彼の、口の端から溢れる笑みがぴたりと止んだ。
「だったらどうなの?」
貼り付けた笑顔とは対照的に、実に平淡な口調をもってして歩み寄り、香緒里の眼前で膝を屈め話す。
「僕を捕まえる? そして全て明らかにする? でも出来るかなぁ、今の刑事さんに」
膝の上に片手で頬づえをつき、観賞物を眺めるかのような表情。香緒里は自身の状況を理解した上で、ぐっと歯噛みし刹那をねめつける。
「あなたがこんなことをする目的は何!?」
すると刹那は「目的? 目的かぁ……」と少年のような表情でしばし視線を宙へ游がせ目的、目的……と呟いた後、作られた三日月の笑みを浮かべ、やがて答えた。