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【S】―エス―01

第20章 対峙

 

 瞬矢たちが『東雲 刹那』を雛型としたクローンから造り出された存在であり変異個体だということは、すでに話しただろう。


 そもそも、クローン自体はオリジナルが何であれ、生物の形を成した時点ではまだ赤子の姿でしかない。


 大きな試験管のような容器に満たされた培養液の中で生を受けた彼らは、自我の覚醒後、成長促進剤を与えられた。


 急速な身体の成長と、それによる副作用。高熱に加え節々の軋みと激痛で、冷たい床に蹲り身悶えのたうち回る。


 次いで投与された2種類の薬品。ひとつは能力を極限までに引き出し、もうひとつはそれを抑制する為に。


 目的は生きた殺人兵器、傀儡にすること。


 喜怒哀楽、その他『辛さ、苦しみ、思いやり』などといった一切の感情は不要と、全ては完璧な兵器に仕立てる為。


 その為ならば、彼らの『人』としての権利は二の次。


 彼らは2度に亘り肉体的、精神的な苦痛を余儀なくされたのだ。度重なる薬の投与と、幾度となく自らの分身の死を目の当たりにするという形で。
 

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