
【S】―エス―01
第20章 対峙
入り口上部にある見慣れたマークの意味。照らさずとも分かる、その場所はトイレ。
目線を正面に戻す。ふと視界の先、廊下の真ん中辺りに何かが映り込む。
小さく色は黒っぽいが、暗闇の中で輪郭のはっきりとしないそれに瞬矢は思わず目を細める。
試しに懐中電灯の光を当ててみた。円形の光のもと浮き彫りとなったのは、小さく黒い嘴(くちばし)のような物体。
嘴のような鍵爪のようなそれに見覚えがあった。
歩み寄り左手で拾い上げたそれからは、途中でぷつりと切れた赤い糸が垂れている。
「茜……」
瞬矢は手の中のそれを見つめ、ぽつりと溢す。
間違いない。それは最後に会った時、茜が着ていたコートのボタンだった。
糸の断面が揃っていることから、自然に外れたのではなく意図的に切り取ったものと考えられる。
瞬矢は拾ったそれを手の内に納め集中し、瞼をゆっくり閉じる。
意識してそれをするのは初めてだった。少しずつ、瞼の裏に映像が浮かび視えてくる。
向かって廊下の左側、奥より2番目の部屋から出てきた人物――刹那だ。彼は嘴形のボタンが置いてあった場所、つまり瞬矢のすぐ目の前に立つ。
目線を正面に戻す。ふと視界の先、廊下の真ん中辺りに何かが映り込む。
小さく色は黒っぽいが、暗闇の中で輪郭のはっきりとしないそれに瞬矢は思わず目を細める。
試しに懐中電灯の光を当ててみた。円形の光のもと浮き彫りとなったのは、小さく黒い嘴(くちばし)のような物体。
嘴のような鍵爪のようなそれに見覚えがあった。
歩み寄り左手で拾い上げたそれからは、途中でぷつりと切れた赤い糸が垂れている。
「茜……」
瞬矢は手の中のそれを見つめ、ぽつりと溢す。
間違いない。それは最後に会った時、茜が着ていたコートのボタンだった。
糸の断面が揃っていることから、自然に外れたのではなく意図的に切り取ったものと考えられる。
瞬矢は拾ったそれを手の内に納め集中し、瞼をゆっくり閉じる。
意識してそれをするのは初めてだった。少しずつ、瞼の裏に映像が浮かび視えてくる。
向かって廊下の左側、奥より2番目の部屋から出てきた人物――刹那だ。彼は嘴形のボタンが置いてあった場所、つまり瞬矢のすぐ目の前に立つ。
