
【S】―エス―01
第20章 対峙
向かって右奥に視線を送ると、白いパイプ製のベッドに小柄な体を横たえる茜の姿が確認できた。駆け寄ろうとしたその時、
「彼女なら、大丈夫だよ」
聞き覚えのある声と共にキィンと耳鳴りがし、その不快な音に耳を押さえ顔をしかめる。
すると部屋の端から自分と同じ顔の人物、刹那がその姿を現す。
彼はゆっくりと間に立ちはだかり正面を向くと、思案するかの如く伏せた瞼を開ける。
《君とこうして会うのは、10年ぶりだね》
じっと瞬矢を見据え、笑みを湛える唇は結ばれ三日月を描く。その声は耳ではなく、直接頭の中に響いてきた。
《僕は僕の目的を達成する。その為なら、なんだって利用するさ。――例え、大切なものでもね》
刹那は、にいっと口角をつり上げる。
「……っ」
《そんなことの為に……》
刹那の言葉に苦々しく表情を歪める。沈黙の中、互いに向き合う瞬矢と刹那。2人の【S】。
目視できないが、対峙する2人の間にあの日窓の外に見た烏揚羽が舞う。ひらひらと行き交う言霊。
先達てそれを散らしたのは――。
「っざけんな!」
つい感情的に、瞬矢は右手に持っていた懐中電灯を刹那に対し投げつける。
「彼女なら、大丈夫だよ」
聞き覚えのある声と共にキィンと耳鳴りがし、その不快な音に耳を押さえ顔をしかめる。
すると部屋の端から自分と同じ顔の人物、刹那がその姿を現す。
彼はゆっくりと間に立ちはだかり正面を向くと、思案するかの如く伏せた瞼を開ける。
《君とこうして会うのは、10年ぶりだね》
じっと瞬矢を見据え、笑みを湛える唇は結ばれ三日月を描く。その声は耳ではなく、直接頭の中に響いてきた。
《僕は僕の目的を達成する。その為なら、なんだって利用するさ。――例え、大切なものでもね》
刹那は、にいっと口角をつり上げる。
「……っ」
《そんなことの為に……》
刹那の言葉に苦々しく表情を歪める。沈黙の中、互いに向き合う瞬矢と刹那。2人の【S】。
目視できないが、対峙する2人の間にあの日窓の外に見た烏揚羽が舞う。ひらひらと行き交う言霊。
先達てそれを散らしたのは――。
「っざけんな!」
つい感情的に、瞬矢は右手に持っていた懐中電灯を刹那に対し投げつける。
