【S】―エス―01
第20章 対峙
だが彼は妖しげな笑みを崩すことなく、かといって避けることもせず、すうっと左手を正面に翳す。
綺麗な放物線を描き回転を繰り返す懐中電灯は、刹那の2メートルほど手前でぴたりと停滞し、宙に漂う。
刹那は翳した左手をさっと真横へ払い、指先で弾く。
ガラス部分は呆気なく砕け、宙で粉々に分解された。ぱらぱらと床に落ちる破片を一瞥し、左手を下ろす。
彼の動作に合わせ、自身の髪とライトグレーのコートの裾がふわりと靡く。
「危ないなぁ。彼女に当たったらどうするのさ」
そう言った刹那はくいと顎を上げ、視線だけ見下ろす形で口元に冷笑を浮かべる。
一時の感情に任せ投じたそれはあまりにも呆気ない結果を辿り、頭に昇った血が一気に引き、最早冷静さを通り越して嘲笑さえ込み上げる始末だ。
まずは茜を奪還しないと始まらない。
視界の端に廃材を捉え、じりっ、コンクリートの破片を踏みしめる音と感触。共に地を蹴るフェイント。
――しかし、
「させないよ」
「――!」
綺麗な放物線を描き回転を繰り返す懐中電灯は、刹那の2メートルほど手前でぴたりと停滞し、宙に漂う。
刹那は翳した左手をさっと真横へ払い、指先で弾く。
ガラス部分は呆気なく砕け、宙で粉々に分解された。ぱらぱらと床に落ちる破片を一瞥し、左手を下ろす。
彼の動作に合わせ、自身の髪とライトグレーのコートの裾がふわりと靡く。
「危ないなぁ。彼女に当たったらどうするのさ」
そう言った刹那はくいと顎を上げ、視線だけ見下ろす形で口元に冷笑を浮かべる。
一時の感情に任せ投じたそれはあまりにも呆気ない結果を辿り、頭に昇った血が一気に引き、最早冷静さを通り越して嘲笑さえ込み上げる始末だ。
まずは茜を奪還しないと始まらない。
視界の端に廃材を捉え、じりっ、コンクリートの破片を踏みしめる音と感触。共に地を蹴るフェイント。
――しかし、
「させないよ」
「――!」