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【S】―エス―01

第20章 対峙

 静かに言う口調からは、こちらの意図など全て見透かしている、そんな節があった。


 思わず動作が鈍り、目を見開く。


 瞬間、見えない……だが確かに感じた風圧に弾き飛ばされ、コンクリートの壁に思い切り叩きつけられる。


「……がっ!」


 衝突音と同時に上がる乾いた呻き声。背中を強打し、鈍く走る痛みから上手く息ができない。


 右手で胸の辺りを押さえ、ずるずると冷たい床にへたり込む。


「くっ……」


(こりゃ……罅、入ったかな?)


 その顔はにわかに引きつっていた。奥歯を噛み締め前のめりに床に左手と膝をつき、ゆっくりと呼吸を整え眼前の刹那へ視線を送る。


 刹那は先ほどと同じ場所に佇んだまま、黒髪の合間から覗く薄紫色の双眸で、じっと瞬矢のことを見据えていた。


 視線を送り合う、同じ容貌の2人。


 ただ違うところがあるとすれば、それは――雰囲気。


 彼が纏っている空気とでもいうのだろうか。だがそれは決して瞳の色だけの話ではなかった。


 下ろしていた右腕をすうっと真横へ掲げた途端、薄紫色の虹彩はより光を増し、艶やかな黒髪をそして衣服を軽やかにはためかせる。
 

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