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【S】―エス―01

第21章 崩壊

 
「瞬矢!」


 束の間、周囲に襲う風圧。


「……きゃっ!?」


 思わず両腕で顔を覆い、固く目を伏せる。


 ゆっくり目を開けると、ひしゃげた鉄パイプを手にした瞬矢は茜の眼前に背を向け立つ。


 そろそろと胸元に下ろされた手を握り、瞬矢を見上げる。前にも見たことのある、あの綺麗だが冷たい水色の目が恐ろしかった。


 近づくことに躊躇っていると、瞬矢は淡く光を帯びた水色の瞳をふっと瞼の内に隠し顔だけで少し振り返り言う。


「助けんの……遅くなってごめんな。少し、離れててくれ」


 再び瞼を持ち上げ微笑む彼の双眸はいつも通りで、むしろ柔らかな光を宿した黒水晶のよう。けれどもその瞳は、どこか寂しく切なく揺らめいていた。



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