【S】―エス―01
第21章 崩壊
背後で茜の声がした。視線を戻すと同時に、刹那の双眸は薄紫色に見開かれ――。
「――!」
見切られていると分かっていながら、そのまま振り下ろす。
瞬矢が違和感に気づいた時、鉄パイプはぐにゃりとL字型に捩れ変形していた。
次いで波の如く襲い来る圧に、咄嗟に両腕を交差させ防ぐも弾かれる。
「――っ!」
乾いた音と粉塵を巻き上げ両足で地面に着地し、ゆっくりと立ち上がる。
茜の気配に背を向けたまま一瞥をくれる。感情的、衝動的な行動、そして何よりもこの目に身を縮こまらせ酷く怯えていた。
伏せた瞳からは、小さく温かな滴がぽたぽたと溢れ落ちる。右手に巻かれた白いハンカチ、そこにはうっすらと血が滲む。
『君が突き放すから、彼女が傷つく』
不意に、先ほどの刹那の言葉が脳裏を掠める。
もう大切な人を悲しませないと傷つけないと、ここへ来る時そう固く誓ったはず。なのに――。
最後に茜の笑顔を見たのは、いつだったろう。思い返せば、随分と遠い昔のことのようで。
ふうっと肩の力が抜ける。
(『泣き虫』か……)
「――!」
見切られていると分かっていながら、そのまま振り下ろす。
瞬矢が違和感に気づいた時、鉄パイプはぐにゃりとL字型に捩れ変形していた。
次いで波の如く襲い来る圧に、咄嗟に両腕を交差させ防ぐも弾かれる。
「――っ!」
乾いた音と粉塵を巻き上げ両足で地面に着地し、ゆっくりと立ち上がる。
茜の気配に背を向けたまま一瞥をくれる。感情的、衝動的な行動、そして何よりもこの目に身を縮こまらせ酷く怯えていた。
伏せた瞳からは、小さく温かな滴がぽたぽたと溢れ落ちる。右手に巻かれた白いハンカチ、そこにはうっすらと血が滲む。
『君が突き放すから、彼女が傷つく』
不意に、先ほどの刹那の言葉が脳裏を掠める。
もう大切な人を悲しませないと傷つけないと、ここへ来る時そう固く誓ったはず。なのに――。
最後に茜の笑顔を見たのは、いつだったろう。思い返せば、随分と遠い昔のことのようで。
ふうっと肩の力が抜ける。
(『泣き虫』か……)