【S】―エス―01
第21章 崩壊
徐々に冷静さを取り戻し、すうっと瞑目すると顔だけで茜の方を振り返り言う。
「助けんの……遅くなってごめんな」
ゆっくり開いたもとの穏やかな黒い瞳に、わずかな悔恨を湛えて。
再び視線を正面に向け、L字型に変形した鉄パイプを床に放る。
それは床で一度軽く跳ね、冷たく乾いた音を上げてコンクリートに擦れながら停止し、景色の一部と化した。
「少し、離れててくれ」
目の前の人物を見据え言う。
眼前に佇む刹那の背後の空間が、ぐにゃりと歪に捩れて見えた。錯覚とは思えないその現象に、瞬矢は目を細め訝しむ。
一瞬でも力を使った影響が出たのだろうか。
もう、『力』は使えない。
だがそもそも、勝ち負けなど端から視野に入れてはいなかった。
ただ、目の前に立っている自分と同じ顔の彼。 きっと、彼の中に潜むその闇を一番理解してやれるのは自分しかいない――と、そう思ったのだ。
幸い、あの一瞬に解放された力の影響で傷はほぼ再生されていた。あと少しなら……そう思い、一歩を踏み出す。
「助けんの……遅くなってごめんな」
ゆっくり開いたもとの穏やかな黒い瞳に、わずかな悔恨を湛えて。
再び視線を正面に向け、L字型に変形した鉄パイプを床に放る。
それは床で一度軽く跳ね、冷たく乾いた音を上げてコンクリートに擦れながら停止し、景色の一部と化した。
「少し、離れててくれ」
目の前の人物を見据え言う。
眼前に佇む刹那の背後の空間が、ぐにゃりと歪に捩れて見えた。錯覚とは思えないその現象に、瞬矢は目を細め訝しむ。
一瞬でも力を使った影響が出たのだろうか。
もう、『力』は使えない。
だがそもそも、勝ち負けなど端から視野に入れてはいなかった。
ただ、目の前に立っている自分と同じ顔の彼。 きっと、彼の中に潜むその闇を一番理解してやれるのは自分しかいない――と、そう思ったのだ。
幸い、あの一瞬に解放された力の影響で傷はほぼ再生されていた。あと少しなら……そう思い、一歩を踏み出す。