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【S】―エス―01

第21章 崩壊

 気道を圧迫され顔を歪めながらもへらりと笑い、掠れた声で断言する。


 かっと目を見張り、刹那の薄紫色の虹彩はより輝きを増す。今にも縊(くび)り殺さんばかりの勢いだ。


 部屋を照らす蛍光灯が炸裂音と火花を上げ、次々と砕け散る。


 真っ向から自分を見据える刹那の背景が歪んで見えたのは、決して酸素が不足した幻覚という訳でもないだろう。


 ――力は使えない。霞む意識の中で薄紫の瞳を視界に捉えながら、瞬矢はその理由を思い出していた。




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