【S】―エス―01
第21章 崩壊
――それはここへ来る前、東雲 暁に「力を使うな」と言われた時のこと。
「どうして?」
すると東雲 暁は目を伏せ、やがて少しばかり天を仰ぐ。
「君は、宇宙がどうやってできるか知ってるか?」
彼の突飛な発言に、ただ黙って大きく首を横に振る。そんなこと、今まで考えた試しがなかったからだ。
宇宙は、我々の与り知らないところで常に一定の力がぶつかり合い誕生している。それはなんなのか。
――答えは明確。
そう、いわゆる『平行宇宙』――【パラレル】というやつだ。
そして新たな宇宙を生み出すその主なエネルギーとなっているのが、他ならぬ斥力である。
「もし彼が『力』を解放した状態で、君までその力を使ったら――」
黙って言葉の続きを待つ。
「この世は終わる」
静かにゆっくりと紡がれる彼の言葉に、瞬矢は大きく目を見張った。
「そん……な!?」
何故、そうなるのか。それは、先ほどの話にあった平行宇宙論と大きく密接している。
想像できるだろうか。
例えるならば、頂上の見えない超高層マンションのように隣接する無数の部屋であり、それが同時に無限に存在する。その内のひとつがこの世界なのだ。