【S】―エス―01
第21章 崩壊
声を上げ茜が這い寄る。反射的に背中を向けたことで、正面から床に打ち付けられることだけは回避できた。
すぐさま起き上がり茜の左斜め前に片膝をつくと、刹那を見上げながら言う。
「ふ……やっぱりな。お前は感情を捨てきれちゃいない。だろ?」
どこか核心に触れたかのような笑みで。
もしも本当に感情のない殺人兵器に成り果ててしまっていたならば、ついさっき、あの瞬間になんの躊躇いもなく縊(くび)り殺しているはずだ。だが、彼はそれをしなかった。
「殺人兵器だろうがなんだろうが、やっぱりお前も【人間】なんだよ」
向き直りゆっくりと歩を進める刹那は、瞬矢の発した一言にぴたりと足を止め、俯きがちなその表情により深い影を作る。
「ほんの少し思い出したくらいで……知ったくらいで、全部分かった気にならないで」
「……刹那?」
『刹那』そう瞬矢が言った途端、彼は頭を垂れくつくつと堪えきれない笑みを漏らす。
「『刹那』……か」
やがてその笑みは、嘲るような懐かしむような言葉を紡ぐ。
「昔、僕らは数字で呼ばれてた。名前なんて、単なる個を識別する為の記号にすぎない」
(……数字?)
すぐさま起き上がり茜の左斜め前に片膝をつくと、刹那を見上げながら言う。
「ふ……やっぱりな。お前は感情を捨てきれちゃいない。だろ?」
どこか核心に触れたかのような笑みで。
もしも本当に感情のない殺人兵器に成り果ててしまっていたならば、ついさっき、あの瞬間になんの躊躇いもなく縊(くび)り殺しているはずだ。だが、彼はそれをしなかった。
「殺人兵器だろうがなんだろうが、やっぱりお前も【人間】なんだよ」
向き直りゆっくりと歩を進める刹那は、瞬矢の発した一言にぴたりと足を止め、俯きがちなその表情により深い影を作る。
「ほんの少し思い出したくらいで……知ったくらいで、全部分かった気にならないで」
「……刹那?」
『刹那』そう瞬矢が言った途端、彼は頭を垂れくつくつと堪えきれない笑みを漏らす。
「『刹那』……か」
やがてその笑みは、嘲るような懐かしむような言葉を紡ぐ。
「昔、僕らは数字で呼ばれてた。名前なんて、単なる個を識別する為の記号にすぎない」
(……数字?)