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【S】―エス―01

第21章 崩壊

 ◇4


 一定の距離を置き、重なる2人の双眸。電流のように伝わってきたのは、自分が目覚める直前の彼の記憶。


 少しずつ、少しずつ眠っていた記憶が甦る。


(そうだ。あの時真っ暗な闇の中で、確かに誰かの呼ぶ声が聞こえて。でも……)


 瞬矢は手元の腕輪に視線を落とす。銀色のそれは、月明かりを受け鈍く輝いていた。


 やはりそこに刻まれた【S‐06】は自分が持ち続けた数字で、またそれが自分のものでないという確固たる確証もなかった。


 意識は晴れない靄の中で、瞬矢はひたすら答えを模索する。


 その姿に、刹那は伏し目がちにふっと口角をつり上げる。そしてコートの右ポケットから全く同じ腕輪を取り出し、眼前に掲げ言う。


「君のは、こっちだよ」


 そこに刻まれた数字を瞬矢がよく見えるように無下に放る。


 金属とコンクリートがかち合う冷たい音と共に軽やかに床を擦れ、足元へ滑り込むもうひとつの腕輪には【S‐07】と刻まれていた。


 今まで兄弟と思ってきた存在を疑りたくはなかったが、そうやって自分を言い含めようとしているのかもしれない。


 また、その言葉を受け入れるのに、腕輪以外の確固たる証拠もない。
 

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