【S】―エス―01
第22章 あの日――
そこに大きく刻まれているシリアルナンバーを見て何か思いついたのか、嬉しそうに「あっ!」と声を上げ言う。
「『りく』!」
「りく……?」
いったい何をもってそのような単語が出たのかと、少年は提示されたその『名前』を鸚鵡(おうむ)返しに訊ねる。
「ほら、これ」
少年が左手首につけている、一見すると腕時計のような銀色の腕輪。そこに刻まれた【S‐06】という数字の『6』の部分を指差した。
なんでも、父親の会社内に『六野(りくの)』という人がいて、数字と読みが同じことに気づき思いついたらしい。
「ふぅん」
腕輪に彫られてある数字を見つめ、少年は妙に納得したようにひとつ鼻から息を漏らす。やがて、目を伏せたまま嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。えっと……」
ふっと顔を上げ、彼はあることに気づく。
(……この子、なんていうんだろう?)
きっと彼女にも、彼女だけの『名前』があるに違いない。
「そういや、君の名前は?」
気づいた時、少年は目の前の少女に名前を訊ねていた。
この少女は、つい今しがた会ったばかりの自分に『名前』というものを与え、呼んでくれた。自分もまた彼女の名前を呼びたい。
「『りく』!」
「りく……?」
いったい何をもってそのような単語が出たのかと、少年は提示されたその『名前』を鸚鵡(おうむ)返しに訊ねる。
「ほら、これ」
少年が左手首につけている、一見すると腕時計のような銀色の腕輪。そこに刻まれた【S‐06】という数字の『6』の部分を指差した。
なんでも、父親の会社内に『六野(りくの)』という人がいて、数字と読みが同じことに気づき思いついたらしい。
「ふぅん」
腕輪に彫られてある数字を見つめ、少年は妙に納得したようにひとつ鼻から息を漏らす。やがて、目を伏せたまま嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。えっと……」
ふっと顔を上げ、彼はあることに気づく。
(……この子、なんていうんだろう?)
きっと彼女にも、彼女だけの『名前』があるに違いない。
「そういや、君の名前は?」
気づいた時、少年は目の前の少女に名前を訊ねていた。
この少女は、つい今しがた会ったばかりの自分に『名前』というものを与え、呼んでくれた。自分もまた彼女の名前を呼びたい。