【S】―エス―01
第22章 あの日――
そこは、クリーム色の外壁が特徴的な西洋風の屋敷と、庭には天に向かい真っ直ぐ聳える楓の木。その屋敷の中に少年はいた。
12月上旬。今にも天気は崩れそうだ。
片割れの姿が見当たらない。きっと彼は今頃、先日会った恐らくここの娘であろう『茜』という少女と遊んでいるのだろう。
ある部屋の奥から女の声がした。少年は廊下の壁にぴたりと身を寄せ、少し開いたドアの傍へ這い寄る。
「こうして見ていると、まるで本当に……」
窓際に立つ白衣を着た1人の女が、その光景を見て不意にそう漏らす。
(……何? 今、なんて?)
壁に背中を合わせ聞き耳を立てていた少年は、目を見開く。交わされる会話は断片的にしか聞き取れなかった。
「本当にいいんですか? あの子たちは――」
40代くらいの、この男も白衣を着ている。だが他の者達と比べ、会話の内容にやや牽制ぎみな様子だ。
左隣にいた白衣を着た男の言葉に、人物は冷静だが重々しい口調で後ろ手に窓の外を見下ろし答える。
部屋の外でもう1人、少年が聞いているとも知らず。
「ああ。この研究には、多額の費用をつぎ込んでいる。それに、今さら後戻りなど……」
12月上旬。今にも天気は崩れそうだ。
片割れの姿が見当たらない。きっと彼は今頃、先日会った恐らくここの娘であろう『茜』という少女と遊んでいるのだろう。
ある部屋の奥から女の声がした。少年は廊下の壁にぴたりと身を寄せ、少し開いたドアの傍へ這い寄る。
「こうして見ていると、まるで本当に……」
窓際に立つ白衣を着た1人の女が、その光景を見て不意にそう漏らす。
(……何? 今、なんて?)
壁に背中を合わせ聞き耳を立てていた少年は、目を見開く。交わされる会話は断片的にしか聞き取れなかった。
「本当にいいんですか? あの子たちは――」
40代くらいの、この男も白衣を着ている。だが他の者達と比べ、会話の内容にやや牽制ぎみな様子だ。
左隣にいた白衣を着た男の言葉に、人物は冷静だが重々しい口調で後ろ手に窓の外を見下ろし答える。
部屋の外でもう1人、少年が聞いているとも知らず。
「ああ。この研究には、多額の費用をつぎ込んでいる。それに、今さら後戻りなど……」