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【S】―エス―01

第23章 覚醒

 不安定に揺らぐ薄紫の瞳で自身の右手を見やり、刹那は続ける。


「君も、自分がみんなとどこか違うことを感じてた。だからいつも他人と距離を置いてた」


「――!」


 図星とばかりに肩を震わせ、瞳はこれ以上ないほど見開く。


「っ……!」


 茜は刹那を見やる。


 まるで全てを見てきたかのような刹那の口振り。だが、瞬矢はそれを否定しようとしない。


 俯いたまま刮目した視線は、手元の腕輪を捉える。


(なんで何も言い返さないの? 確かに初めは壁があるって思ってた。けど……)


 見えない心の壁。まるでそれを隠すかのような素っ気なさ。


 だが決してそれだけではないことを、茜は誰よりも知っていた。今までの出来事がフラッシュバックする。


 彼が言い返さないのは少なからず認めているからだと悟り、けれども一方的に言われ続ける歯痒さに胸の前で右手を握り、瞬矢を映す視界に熱いものが込み上げる。


「兵器として造られた僕らに、感情も名前も――何もいらない。あるのは目の前にあるものを破壊する衝動だけ」


 更に刹那が追い打ちをかける。見開かれ空虚を捉える薄紫色の双眸は、無感動に瞬矢を見下ろす。


「ねぇ、そうでしょ『瞬矢』?」


 

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