【S】―エス―01
第23章 覚醒
少女は、か細く今にも消え入りそうな声で続ける。
「もし、バラバラになったらどうしよう……」
漠然としたものだが、彼女が危惧するのも無理はない。
暗い場所で眠り続け目覚めた自身の出生を思えばこれから先、いつ何が起こるかなど分からないのだ。
「大丈夫! 例え離ればなれになっても、茜ちゃんはぜったいに僕が見つけて護ってみせるから!」
少女の不安をくみ取ってか、りくはそう言い笑ってみせる。どこからか、夕刻を知らせるメロディーが聞こえてきた。
――ドヴォルザーク作曲、交響曲第9番第2楽章『新世界より』。
(そうだ。僕が――)
だが、その少年と少女が再び会うことはなく……。
「ずっといっしょだよ?」、「ぜったい護ってみせる」それが、10年前に東雲 茜ともう1人の少年りくが交わした最後の言葉だった。
**
ぽたりと頬に当たった水滴は、あの日降っていた初雪よりも温かく、彼の深層を潤わせた。
「――や……っ!」
遠くで声が聞こえた。今にも泣き出してしまいそうな、とても大切な人の声。
《――彼女を、護れ!》
「もし、バラバラになったらどうしよう……」
漠然としたものだが、彼女が危惧するのも無理はない。
暗い場所で眠り続け目覚めた自身の出生を思えばこれから先、いつ何が起こるかなど分からないのだ。
「大丈夫! 例え離ればなれになっても、茜ちゃんはぜったいに僕が見つけて護ってみせるから!」
少女の不安をくみ取ってか、りくはそう言い笑ってみせる。どこからか、夕刻を知らせるメロディーが聞こえてきた。
――ドヴォルザーク作曲、交響曲第9番第2楽章『新世界より』。
(そうだ。僕が――)
だが、その少年と少女が再び会うことはなく……。
「ずっといっしょだよ?」、「ぜったい護ってみせる」それが、10年前に東雲 茜ともう1人の少年りくが交わした最後の言葉だった。
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ぽたりと頬に当たった水滴は、あの日降っていた初雪よりも温かく、彼の深層を潤わせた。
「――や……っ!」
遠くで声が聞こえた。今にも泣き出してしまいそうな、とても大切な人の声。
《――彼女を、護れ!》