【S】―エス―01
第24章 兄弟
手の腹でしきりに涙を拭いながら、茜は「うん……」と辿々しく答え、同時に何度も頷いた。
やっと知ることができた本懐。彼の口から彼の言葉で。
「約束だ。何があっても必ず戻る」
再び前方を鋭く見据える。それとほぼ同時に生じた白い冷気が瞬矢を中心に螺旋を描き、1メートル範囲を緩やかに覆う。
その姿を月光が照らし、己が冷気にゆらりと靡く黒髪すらも仄かに青く色づいて見えた。
発生した大気と大気がぶつかり合い、今、自分たちの存在する建物内の空間はいよいよもって臨界を迎えんとしていた。
横目で茜が床に手をつき中腰の体勢をとったことを確認し、そして叫んだ。
「行け!」
その声に急き立てられるように立ち上がり、やや左後方に位置する部屋の入り口まで一気に駆け出す。
走ることで視点が上下し定まらず、ぶれた視界に入る開け放されたドア。入り口を出たところで一瞬速度を緩ませ振り返る。
(必ずだよ? 信じてるから……)
眉尻を垂れ、切なく見つめる。廊下に向いた足取りは、いつの間にか止まっていた。
「止まるな! 走れ!」
やっと知ることができた本懐。彼の口から彼の言葉で。
「約束だ。何があっても必ず戻る」
再び前方を鋭く見据える。それとほぼ同時に生じた白い冷気が瞬矢を中心に螺旋を描き、1メートル範囲を緩やかに覆う。
その姿を月光が照らし、己が冷気にゆらりと靡く黒髪すらも仄かに青く色づいて見えた。
発生した大気と大気がぶつかり合い、今、自分たちの存在する建物内の空間はいよいよもって臨界を迎えんとしていた。
横目で茜が床に手をつき中腰の体勢をとったことを確認し、そして叫んだ。
「行け!」
その声に急き立てられるように立ち上がり、やや左後方に位置する部屋の入り口まで一気に駆け出す。
走ることで視点が上下し定まらず、ぶれた視界に入る開け放されたドア。入り口を出たところで一瞬速度を緩ませ振り返る。
(必ずだよ? 信じてるから……)
眉尻を垂れ、切なく見つめる。廊下に向いた足取りは、いつの間にか止まっていた。
「止まるな! 走れ!」