【S】―エス―01
第24章 兄弟
彼の一喝に背中を押され、後ろ髪引かれる想いを振り切り階段目指し廊下を走る。
突き当たりの階段を1階まで転がるように駆け下りると、左側に大きなガラス張りのドアが姿を現す。
小走りでそこへ駆け寄ると手をかけ、重たく軋むそのドアを開けた。
12月の冷たい風がドアの隙間から緩やかに吹き込み、茜の鼻腔から肺へと新鮮な外気を送り届ける。
「茜!」
不意に誰かが自分を呼んだ。それはずっと昔に聞いた落ち着きのある、それでいて懐かしい声。
「……お父……さん?」
茜は声がした方に視線を送り、辿々しく言葉を綴(つづ)る。そこには眼鏡をかけスーツ姿の人物がいた。
はっきりと彼女の記憶にある父親の肖像は、白衣を着て常に難しい顔をした人物。
だが今彼女の目の前にいるのは、うっすらと記憶の片隅に残る茜の父親、東雲 暁であった。
両足を縺(もつ)れさせ転びそうになりながら駆け寄る茜を彼もまた、数歩歩み寄り受け止める。
眼鏡の奥より茜を見下ろす彼の瞳に罪の光が宿っていることを、彼女はまだ知らない。
突き当たりの階段を1階まで転がるように駆け下りると、左側に大きなガラス張りのドアが姿を現す。
小走りでそこへ駆け寄ると手をかけ、重たく軋むそのドアを開けた。
12月の冷たい風がドアの隙間から緩やかに吹き込み、茜の鼻腔から肺へと新鮮な外気を送り届ける。
「茜!」
不意に誰かが自分を呼んだ。それはずっと昔に聞いた落ち着きのある、それでいて懐かしい声。
「……お父……さん?」
茜は声がした方に視線を送り、辿々しく言葉を綴(つづ)る。そこには眼鏡をかけスーツ姿の人物がいた。
はっきりと彼女の記憶にある父親の肖像は、白衣を着て常に難しい顔をした人物。
だが今彼女の目の前にいるのは、うっすらと記憶の片隅に残る茜の父親、東雲 暁であった。
両足を縺(もつ)れさせ転びそうになりながら駆け寄る茜を彼もまた、数歩歩み寄り受け止める。
眼鏡の奥より茜を見下ろす彼の瞳に罪の光が宿っていることを、彼女はまだ知らない。