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【S】―エス―01

第24章 兄弟

 
 ――12月22日、午後9時30分。


 びりびりと直接肌へ伝わってくるほどに大気が打ち震える。雲は月光を遮り、怯えたように辺りの木々はざわめく。


 思わず背後の建物を振り仰ぐ。先ほどまで自分がいたであろう場所、建物の窓ガラスが砕け、2階から3階部分にかけてがらがらと内部へ向け崩れ落ちたのだ。


「――瞬矢!?」


 信じて待つとは言ったものの、その光景を目の当たりにしてしまえばやはりじっとしてなどいられなかった。


 今更自分が戻っても、邪魔になるのは明白。だが考えるよりも先に体が動いていた。


 それを背後にいた茜の父親が、左腕を掴み制する。ぎゅっと瞼を閉じ、茜はゆっくり身を引く。


 『必ず戻る』その言葉を心の中で何度も思い出し唇を噛み締め、祈るように事の行く末を見守る。



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